2020年10月31日

「あしたの大福」への道 ①

本日、新商品「あしたの大福」が発売されました。
和菓子業界としてはタブーとされる、
砂糖を使用しない和菓子です。
米糀による発酵の力で作られた「あま糀」と
オリゴ糖による優しい甘さを実現することができました。
(※砂糖をサトウキビ、テンサイから作られる「ショ糖」としてお話しします。)

「あしたの大福」開発秘話をお伝えしたいと思います。

和菓子のルーツを遡ると、江戸時代の元禄ごろに
現在の和菓子店が形作られていったようです。
京都を中心に、輸入品である高価な氷砂糖・白砂糖を使った
「上菓子」が作られるようになりました。
当時は高貴な方々の贅沢品としてとても人気があり、
あまりに輸入のために金銀が海外へ流出したことにより
菓子づくりに幕府の認可が必要となっていったそうです。

砂糖の甘さ、その官能は、日本人憧れのステイタスでした。
ですから「砂糖」の美味しさを和素材と楽しむことが
和菓子の原点と言っても過言ではないのです。
まさに、和菓子にとって主役は「砂糖」なのです。

あんこの炊き方、蒸し菓子、焼き菓子、餅菓子
あらゆる和菓子の製造理論は、砂糖を前提として成立しています。

10年以上前より、砂糖を使用しない和菓子はできないものかと
石舟庵では試行錯誤を続けてきました。

その理由は、シンプルに
「甘さ」と「美味しさ」を分けてお菓子を組み立てたい…
と思ったからです。
キシリトール、ラカンカ、希少糖、etc.
代替となりそうな糖分が発表されると、サンプルを取り寄せ
真っ先に試作を行いました。
ですが、何を試しても
お砂糖の美味しさを超えることは出来ませんでした。

しっとり感、口どけ、舌ざわりなど砂糖の力で実現しています。
単純にお砂糖を入れなければ…と感じますが、
あんこに砂糖を入れなければ、ただの煮小豆となってしまいます。
こしあんも、ザラザラのデンプンの固まりでしかありません。

何度も何度も試行錯誤を繰り返した結果、
『砂糖抜きでは、和菓子はつくれない。』
導かれた結論でした。諦めてしまったのです。