タブロイド誌「S」

2021年、石舟庵はお菓子の原材料である蜂蜜を、すべて国産のに切り替えました。
入手も難しく高価な国産蜂蜜を使用するという思い切った決断に踏み切ったのは、下田の稲梓地区で養蜂を営む「高橋養蜂」の高橋鉄平さんとの出会いがあったからです。
 高橋養蜂の蜂蜜は、無添加・無精製。つまりミツバチたちが一生懸命集めてくれた蜜そのままを閉じ込めた自然の恵みです。その味は、どこまでもピュアで甘さにも透明感がある。季節や蜜源によって風味が異なり、それぞれの花の香りが濃厚に漂います。「蜂蜜を食べているというより、花の香りを味わっている感覚。伊豆下田の花々が目に浮かびます。」国内外様々な蜂蜜が存在していたと確信。さらに、高橋養蜂を初めて訪れた時、美しい里山に囲まれた桃源郷のような場所で、養蜂を通じて自然環境の再生に取り組んでいる高橋さんの志、生き方にふれ、深く乾麺を受けたといいます。ミツバチは花々から蜜や花粉をもらう代わりに植物の受粉を促し、野菜や果樹などの実りをもたらし、生態系の維持に大きな役割を果たしています。高橋さんはミツバチが住みやすい環境をつくることで、こうした自然の循環システムを守ろうとしているのです。
 その実践に呼応するように、国産蜂蜜使用という新たな挑戦に踏み出した石舟庵。「自然とミツバチと人。その関係性の環の中に、和菓子店も存在したい」との思いから、和菓子のあるべき姿の模索が始まりました。その取り組みのきっかけとなった高橋養蜂のある伊豆下田を訪ねました。